平成28年度 第1学期始業式 校長式辞

校長

 各地からの桜の便りと共に学校周辺でも桜が満開に近づき、里山のあちらこちらに春霞のような山桜の開花も見られます。この桜をはじめ、モクレン、桃、椿などの花木が一斉に咲き誇り、彩りの鮮やかな季節となってきました。1年の始まりを画する時期としては、厳粛さを感じる正月よりも晴れ晴れとした感じに満ちていると思います。
 さて、こうした雰囲気の中で、本日、平成28年度の第1学期の始業式を執り行うことになりました。第1学期の第1日目でもあると共に、学校での1年間の教育活動の始まりの日でもあります。今年度は、明日入学式を迎える新入生209人を加え、全校613人で始めることになります。613人がこの1年間でそれぞれどんな活躍をするか、どんな成長を遂げるか今から楽しみにしています。
 さて、昨年は、この始業式で学校の教育目標に関することを5点お話ししました。学校の教育目標は、基本的には昨年度と大きく変わってはいませんので、本日は、今年特に重点を置くことについて2点お話しして式辞とします。一つは学習に関することを中心とする高校での教育の質の保証について、二つ目は、意識の持ち方として大人になること、大人としての判断ができるようになることについてです。
 まず、高等学校での教育の質の保証についての話をします。
 近年、文科省の進める教育改革の背景には、グローバル化(多極化)とユニバーサル化(大衆化)の進展があり、高校教育改革、大学教育改革、大学入学者選抜制度の一体的な改革の推進が高校に関係する改革の中心となっています。話の流れは、経済界や企業の立場から見ると受け入れる大学生は明らかに学力不足であり、大学でもっとしっかり学力をつけた学生を送り出してもらいたいとの要請から始まりました。現在の大学生の学力不足は、大学の数が増えている一方で志願者数は少子化により毎年減少しており、数年前から大学の募集定員と志願者の数がほぼ同じくらいになり、数字上は選ばなければどこかの大学に誰でも入れることになってきています。その結果、大学側は、学生を確保するために多様な入試制度を実施し、本来大学の教育を受けるのに必要な学力を高校で身に着けていない学生まで入学させている現実があります。そこから大学の教育の質を確保するためには、その前提となる高等学校の教育の質の保証もしなければならないという話になってきました。高校側の立場からは、高校教育をゆがめている大きな原因の一つは大学入試の在り方だと主張しました。そうしたことから、大学教育と高校教育、それを繋ぐ入試制度を一体的なものとして改革しなければならないという最近の動きとなりました。
 こうした流れの中から、進学か就職かの進路を問わず、すべての生徒に対し高校教育の質の確保と向上を図り、生徒の学習改善に役立てるため、平成31年度を目途に新テスト「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の導入が企画されています。また大学入学者選抜においては、現行の大学入試センター試験を廃止し、特に「思考力・判断力・表現力」を中心に評価する新テスト「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入が、平成32年度を目途に計画されています。二つの新テストのプレテストは、2年前倒しの平成29年度と平成30年度に実施が話題となっています。実施方法の詳細が不明ですが、これが計画通り進めば、新2年生諸君が来年度早速最初のプレテストに対応することになるかもしれません。
 また、諸君の先輩たちの中で、就職試験で筆記試験が課されそれに対応しきれず残念な結果となった人たちもいます。就職を希望しても一定程度の学力を求められる傾向が年々強くなっています。
 このような、国の大きな教育政策の転換や身近な就職試験の現状を踏まえ、本校では平成28年度は「学力の向上」を最重点課題に上げました。具体的には、土曜授業の実施や数日後に行われる全学年で実施する基礎力診断テストの導入をはじめ、先生方には、日々の授業の改善に関わることや進路の指導の改善に関することをいくつかお願いしてあります。生徒諸君も、今年度は昨年度まで以上に授業に取り組む姿勢、勉強するぞという気持ちを強く持ってもらいたいと思います。先生方だけが「何とか諸君の学力の向上を目指そう」と思って授業を工夫して取り組んでも、諸君にその気持ちがなければ成果は上がらないでしょう。生徒諸君の学習に取り組む気持ちの切り替えを強く願っています。授業をしっかり聞く、忘れ物をしない、宿題や提出物は期限守るなど当たり前のことから徹底してください。数か月後には、分かった、できたという手応えを感じるでしょう。
 二つ目は、二つ目は、意識の持ち方として大人になること、大人としての判断ができるようになることについてで、選挙権年齢が18歳に引き下げられたこととの関係です。
 平成26年6月の国民投票法の改正と平成27年6月の公職選挙法の改正で、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられました。これにより、国会議員、地方自治体の首長と議会の選挙、最高裁判所裁判官の国民審査、住民投票の投票資格も18歳以上になります。今後は、民法や少年法をはじめとして多くの法令の年齢規定が見直されることになるでしょう。3年生の中には、早速7月に予定されている参議院議員選挙で投票権を行使できる人もいるでしょう。これまで20歳を迎えて付与された権利や責任が18歳を迎えた諸君にいきなり求められてくることになりました。これらの権利や義務や責任を負えるだけの精神的な準備はできましたか。これを機会に選挙権を持つことの意味、大人になるとはどういうことかを考えていただきたい。大切なことは、年齢を重ねることではなく、自覚して精神的な成長を早めることだと思います。今年の7月の選挙で投票権が行使できるかどうかに関わらず、高校卒業までには精神的に大人と言える段階に到達できるよう日々の生活の中で視野を広め、多角的な物の見方や状況の冷静な判断力を養うことを意識的に行ってください。高等学校で学ぶことへの関わり方も変わってくると思います。私たち教職員も生徒諸君を子供としてではなく大人に近い存在という認識で接していきたいと考えています。
 以上2点を本年度の大きな課題としてお話しし、始業式の式辞とします。
いつも話題にする、目標を持つことや部活動に関することは理解を得られていると思いますので省きます。